
ひかりのさとファーム
(2000/11/ 9)
知多半島道路・東浦インターを降りてすぐのところに「ひかりのさと」はあります。社会福祉法人愛光園が経営する身体障害者療護施設「ひかりのさとのぞみの家」、知的障害者更生施設「まどか」等に加えて平成4年から開設されてきた「ひかりのさとファーム」が平成11年に知的障害者授産施設として再整備されました。環境住まい会議が主催する情報交流セミナーで見学会がありましたので、参加しきました。
元々は牧場であった土地の一部を使って建設されたこの施設は、知的障害者30名、身体障害者5名の職場として、自然食レストラン「くるみ」、パン工房「びいぶる」、平飼の無農薬飼料で育てた養鶏場「丘の上のたまご屋さん」、そして有機無農薬野菜を育てる「筍舎」などが併設されています。まずはここの施設長である渡部さんからお話を伺いました。この施設運営のモットーとして、3つの柱をあげられました。ひとつは「働きやすい環境」。ハンデを負った人間にとって住まいや環境が非常に大事である、という認識から、この建物の設計を、中部自然住宅推進ネットワークに依頼し、木造平屋で環境にやさしい施設として建設をしています。環境に対してだけではなく、ここで働く障害者たちが働く喜びを実感でき、役立っていることが確認できる設備等の配置にこだわっています(例えば12基も設置した流しなど)。2つ目は、ハードだけでなく「ソフト面での支援」。特に障害者に絵文字などによるわかりやすい情報を与えることによる、セルフマネジメントのできる環境づくりや、自閉症など個人の特性に合わせた職を与えることなど。そして3つ目に、社会の役に立っていることが実感でき、「自己実現につながる職場づくり」。実際、喫茶レストランで出されるコーヒーは大変おいしく、また高齢者への配食サービスも行っています。国産小麦と自家培養(天然)酵母を使ったパンは、お昼には売り切れてしまうほどの人気があります。調理場で働く障害者たちのきびきびとした姿が印象的でした。さらに今後は、広大な土地の一画にビオトープづくりを「地域の人と一緒になってやりたい」というおっしゃっていました。

入居者・職員用の食堂 |

レストラン |

ワインの瓶を埋めたしっくい壁 |
続いて、中部自然住宅推進ネットワークの大江さんから、設計と建設についての話がありました。建築士等の専門家集団であるネットワークに対する依頼ということで、内部でコンペを行い、寺川千佳子さんを中心に共同で設計・監理を行ったそうです。施工は竹中工務店。環境と共生した建築物にということで、瓦、杉の下見板張り、しっくいに断熱材として炭化コルクを使うなど、自然素材を使った施設づくりに配慮しています。経費の関係で、太陽光発電や国産材の使用は断念せざるを得なかったそうですが、太陽光を最大限活用するパッシブソーラーを採用、蓄熱に配慮した床コンクリートは砂利洗い出しとして滑りにくくし、食堂や事務室は炭化コルクにポリエチレンカンを敷設した灯油炊きの床暖房を採り入れています。ちなみにこれは意外に経済的で、灯油代は月に1万5千円程度と言っていました。さらに石井式浄化槽により5ppmの水質を達成し、この排水や雨水を貯留しトイレ等に使っています。床材や外壁には、入所者と一緒になって天然塗料である「えの油」を塗ったとのこと。杉下見板は見た目は劣化するが、50年は持つ環境にやさしい素材だとのことでした。しっくいの中にはワインの瓶が埋め込まれ、輝いていました。

老人保健施設「相生」の外観と中庭 |  |
おまけで、ひかりのさとファームの隣に建つ老人保健施設「相生」(平成8年築)も見学もしました。こちらはRC造平屋の建物で、100名のロングステイ、シュートステイの高齢者と、30名のデイケア、ナイトケアを受け入れています。介護保険導入後、若干利用率が下がったと言っていましたが、昨年度は稼働率95%だそうです。中庭を中心にクラスター状で並ぶ配置は、通常より1割ほどはゆったり造られているそうで、明るい雰囲気に満ちていました。
今回、環境共生施設ということで見学をしたのですが、ひかりのさとの明るく豊かな環境は、人間にとって真に必要で快い環境とはどういうものか、思わず考えてしまいました。