
人にやさしい街づくり
(1998/ 3/18)
愛知県では平成6年に「人にやさしい街づくりの推進に関する条例」ができ、平成7年度からは顕彰制度として「人にやさしい街づくり賞」が創設されています。るのですが、3/18にその第3回表彰式と受賞者によるシンポジウムが開かれたので行ってきました。「人にやさしい」とは他都市でいう「福祉のまちづくり」なんですが、敢えて「人にやさしい」と名付けている意味合いが、だんだんと明らかになってきたと感じたので、こちらで報告をします。
まず、受賞作品・活動について紹介します。今回は全部で8者ありました。
1番目は、蒲郡を拠点に障害者もヨットセーリングを楽しもうと活動しているグループ「ヨットエイドジャパン東海」。今やアメリカズ・カップ・チャレンジの街としても有名な蒲郡で、エリカカップの開催に合わせ市民体験ヨットを企画したら大勢の障害者から申込があり、そこからスタートしたという活動で、代表を務められている自身障害者の金子さんの自立的態度が、この活動のみならず、蒲郡市他の様々なまちづくり活動に様々な新しい展開をもたらしているようです。
2番目も蒲郡の海辺、アメリカズ・カップの基地の横にできた「海賓館(マリンセンターハウス)」。これは1927年に建築され、以降70年近くに渡って診療所として活躍した木造洋館を市が譲り受け、解体移築して、喫茶室・展示室・会議室のある施設としてオープンしたもので、障害者への配慮もさることながら、古いものを再活用した点が、記憶と共にある人・そして環境にもやさしいと評価されたようです。新築よりもお金がかかったとは市役所の方の弁ですが、これとともに今まで近寄れなかった海際もデッキウォークが整備され、海・港も人にやさしくなりました。
3番目は「名鉄常滑線朝倉駅」。知多市役所の「人にやさしい街づくり計画」の一環として委員に名を連ねたことが契機で、既存駅としては名鉄として2番目にエレベーター設置等が行われ、その結果が特に評価されました。
4番目は「蒲郡駅南駅前トイレ」。これもトイレという単体が評価されたのですが、この駅南に先立って駅北のトイレを1995年に障害者対応として整備したものの幾つかの点で不都合が見受けられたのを反省し、1997年に整備したこのトイレでは設計当初から利用者の意見を採り入れながら、改善・工夫が行われ、誰にでも使いやすいトイレとなった、その設計態度が特に評価されました。黒い下見板張りのシンプルなデザインも好評でした。
5番目は「大野町商店街振興組合」。江戸時代に城下町・商人の町として栄えた常滑市大野町も今や他の中心市街地と同様、衰退化が目立つ。人口2000人の所に老人クラブメンバーが380名近くと高齢化も著しい。こうした状況を受け、積極的に高齢社会における地域商店街の役割を見つめ直し、老人クラブとともにタウンウォッチングやアンケート等を行い、高齢者をターゲットに据えた商店街づくりを模索しています。題して「尾張大野元気村」。この10の構想には、仮想自治村としての開村、活性化事務局としての尾張大野塾の設置、高齢者にやさしい街整備、ニコニコ優待カード(裏面に病歴欄などを記入)、ニコニコご用聞き、ギャラリーの設置、マップの作成、タウンガイド(看板ポスト)の設置、芸能祭等が盛り込まれており、聞いているだけで楽しくなりました。ただしまだ構想、今年の10月頃を目途に開村に向けたイベントを検討するとのことです。町中の太鼓橋について高齢者にはしんどいと思っていたら、いや健康にいいぞ、お達者橋と名付けようという意見があったという話や、若者はどうなのかという会場からの質問に対し、あくまで高齢者に的を絞ったということ、歴史のある街として語り部を残したい、といった言葉などが印象に残っています。
6番目が蒲郡の「中央通りの歩道を考える会」。これは行政の歩道整備事業に呼応して商店街振興会と総代(町内会)等の一般市民も参加して道路づくりを検討しているもので、コンサルタントのまとめたみちづくり通信とは別に手作りの速報・かわら版を発行し、また障害者とともに車椅子体験や街のチェック、アンケート調査、イメージ図づくりとワークショップ型の市民主体な活動が評価されました。ただしこれも実際の整備はまだいつになるかわからないということです。でも道路整備は基本的に行政の仕事ですので案外早いかもしれない。それよりそれに合わせた商業活性化策、電線地中化案もあるそうですが、こうした地元負担の生じる景観対策等が今後の課題となりそうだということでした。
7番目は「岩倉市天王公園・辻田公園・天神公園・大矢公園づくり」。これはいずれも住民参加により作られた公園です。そしてその後の管理も市から住民組織が受託し管理されている点が評価されました。当日は天神公園の管理をされている天神会の方が話をしてくれました。
8番目、最後が「ラウム福祉仕様車開発チーム」。ようするにトヨタ自動車ですが、特別に福祉仕様車(ウェルキャブ)としての開発だけでなく、標準車においても広い室内、適切なシート高等、人にやさしいデザインを追求し、かつ福祉仕様車においては助手席回転シートや車椅子収納などの仕掛けを施しつつも、わずか9〜18万円プラス、総額でも150万円台という価格設定も評価されました。そしてなにより、エンドユーザーとの対話型開発という手法を取ったこと。そうした利用者重視の「モノ」づくりの姿勢が好感を持てます。
以上、長々と各受賞者について説明をしてしまいましたが、これらを総覧して感じるのは、「人にやさしい」というのが単に障害者や高齢者といった一部の者に配慮するということではなく、利用者が主役となった施設づくり・活動が評価されているということです。利用者に配慮「してやる」のでなく、利用者と「ともに」考える。そうした利用者参加型・市民参加型の「街づくり」こそが「人にやさしい街づくり」として構想されている。そんなことを強く感じました。
担当者に話を聞いても、最近はこうしたことが大分理解され、従来のコアな団体に加え、裾野の広がった幅広い市民レベルの応援団がついてきてくれるようになってきたと述べていましたが、そうであれば嬉しいことです。今までこの「人にやさしい街づくり」という施策に対してどう評価すればいいのか迷っていましたが、ようやく私自身の目の曇りも取れてきたように感じました。