
幸田駅前のまちづくり

愛知県幸田町というのは名古屋から1時間弱の距離にある人口3万人程度の小さな町で、日本電装の進出等で近年人口の伸びが著しい町です。この町の唯一の公共交通機関であるJR東海道線の駅前地区で今、住民主体によるまちづくりが進められています。
旧来のどこにでもあるような駅前の商店街(といっても規模の小さいもの)ですが、自動車交通の発達等から周辺の市や近くを通る国道バイパス沿いの店舗等に客を奪われ、衰退化傾向にあります。駅前を幅員8m程度の通過交通(特にトラック)の多い県道があり、歩道もなく危険な状況にあります。また1本奥に入ると結構ヒューマンスケールの道路があり(生け垣や水路、朝市等)商店だけでなく一般の住宅も多くあります。県では道路の拡幅を予定しており、これを受けた形で町でも町施行の区画整理を計画していましたが、過去数度地元調整を試みたがまとまらず、今回が3度目のチャレンジだそうで、町では当初、地元向けに区画整理のイメージを伝える「絵」の作成を予定していました。しかし、いくらかっこいい「絵」を描いても住民自身が作ったものでなければ、事業の進展は望めない、ということから、住民とともに地区のまちづくりについて考えるということになりました。住民サイドでは区画整理に対抗して駅前研究会という組織をつくり、どうすれば損をせずにすむか、を研究していたようですが、けっこう反対組織にもなりかねない状況もあったと思います。
名古屋市内のコンサルタントである「連空間設計」が住民組織である「幸田駅前まちなみデザイン推進協議会」から受託を受け、まちづくりの推進にあたりました。
まちづくりの進め方として、(1) 自主的なまちづくりの組織づくりを目指す、と(2)基本構想を立案するを目標に、(1) 自由な討議ができる会議の運営 (2) まちづくりニュースの発行 (3) 住民参加の構想立案 (4) 行政と地元代表者との定期的な連絡会の開催 を行うこととしていました。
ところが、実際にまちに入ってみると、先にあげた住民組織がかなりしっかりしており、この場で活動する方が実際的だということになり、その組織の充実を重点に活動を進めたとのことでした。
具体的な方法ですが、特段、目新しい方法があったとは思いません。できるだけ多くの人が参加する住民の集まりを数多く開催する、ということに尽きるように思います。
そのための手法としては、
(1) なるべく多くの人が参加できる、したくなる、せざるをえなくなるテーマを中心に据える>区画整理という切実な問題がありました。
(2) 色々な立場の人の意見を集めれる場をつくる>世帯主が中心となる駅前研究会と2世が中心の中堅層部会、商業者が中心の商人塾等、色々な切り口の組織の場でそれぞれまちづくりを検討
(3) 極力多くの人が参加できるようにする>約200世帯を10組に分け、組毎に年代別に全員集会を行った。
(4) 住民に語らせる>原則として司会等は住民自身が行う。組毎に住民の集まりを行うと10回も同じことを説明することになるので、当初はコーディネーターの方が説明していたことも最後には住民自身の口で説明するようになっていました。私たちが見学に行ったときには、組別の集会自体の時には余り盛り上がっていませんでしたが、終わった後、自然発生的に個別説明会が始まり、住民の方の心配や不安に役員の方自身が説明していた姿は非常に印象的でした。
(5) コーディネーターのスタンスは住民、行政、双方へのアドバイザー>初回の連絡会議で区画整理は道路拡幅のためのものではないか、と痛烈に町批判を行いました。区画整理の保障費の説明にあたっては自宅で区画整理があったときの実際の評価額を披露するなど、行政ではできない方法で住民の疑問を解いていました。
住民の集まりのテーマですが、当初は区画整理の疑問に応える、という形で入っていき、しかし受け身ではなく住民からこういうまちにしたいんだ、という案をつくることが重要だ、ということを説いていったようです。住民の言葉として「区画整理が目的ではなくまちづくりが目的だ、といわれ肩の荷が降り、さらに区画整理は誰にもできる簡単なことだということが判ってきた」という発言がありました。
住民の手でまちづくりをする、という方向が見えてきてからは、会場に大きな地図を貼り、「夢のまちを描く」とか「まちづくりのイメージを語ろう」「まちづくりのキーワードさがし」といったことをやっているようです。またその題材提供として県で行った「景観アイデア募集」応募作品のスライドや東海道沿線の駅前の写真展示などをやってます。
なお、見学に行ったのは先一昨年(1993年)のことで、その後は詳しくは聞いていませんが、子供による夢のまちづくりの模型づくりやお年寄りなどの年代別懇談会、女性懇談会等、様々な階層でのまちづくり活動を進めながら、地域全体でのまちづくり意識の高揚を図り、その結果、今年度(1996年)には「まちづくり会館」の建設にこぎつけ、いよいよ区画整理に向けて機が熟してきたようです。
まちづくりゾーニング計画図 (kota02.jpg 30KB) 
(1997.6.17)
幸田町でコンサルタント活動を展開している連空間設計のホームページに幸田のまちづくりの様子が紹介されています。是非ごらんください。
連空間設計/幸田駅前周辺地区