瀬戸窯垣の小径

 窯垣の小径資料館



(95/06/13)
 愛知県瀬戸市に洞町窯垣の小径といわれる所があります。
 瀬戸市といえば瀬戸物で代表されるように、全国でも有数の陶磁器の産地です。瀬戸では古くから斜面を利用して登り窯を築き、陶磁器を生産していましたが、この洞町もそうした産地の一つで、江戸時代後期には「馬の目皿」「石皿」、明治時代に入ってからは「本業タイル」などのベストセラーを生み出し、現在でも昔の面影のある工場や陶芸作家の陶房が多く点在し、「やきものの里」のたたずまいが感じられる町です。
 この地に今年になってから、窯垣の小径資料館という小さな資料館がオープンしました。

 窯垣とは、登り窯で利用した道具(エンゴロ、タナイタ、ツク)の不用品を用いて石垣としたもので、昔は瀬戸市内各所で見られましたが、コンクリート補強などもせず、当時のままで残っているのは、現在ではこの地域だけとなりました。
 地域に住まわれる陶芸家の水野さんを始め8名の方(内訳は陶芸家1名、窯元3名、八百屋等2名、サラリーマン1名、僧侶1名)が、5年ほど前からこうした窯垣の保存活動を行われていましたが、ちょうど瀬戸川の修景等から端を発した市の施策とも合致し、このたび資料館がオープンすることとなりました。
 たまたま、私が担当している県の愛知まちなみ建築賞の楯の作成をこの水野教雄先生にお願いしており、先日その関係で伺う機会があり、ついでにこのまちづくりの活動について色々とお話を伺ってきました。ちなみに、先生はまだ40代半ばながら、既に日展入選10数回という高名な方ですが、肩書きに似合わず気さくな方で、本当に打ち解けて話ができます。(ちなみに奥さんもきれいです(^_^;))
 資料館については、「本業窯」の窯元であった寺田邸を改修したもので、3年前に他界するまで寺田さんのおばあちゃんが住んでおられた小さなものですが、風呂や便所に本業タイルがふんだんに使われています。
 資料館の整備は市が水野さんたちの要望を受ける形で国等の補助を受け、7000万円の予算で整備(土地代含む)したもので、又たまたま売りに出された近くの土地をこれも水野さんたちの要望を受けて駐車場用地として買収整備しました。
 しかし、整備にあたっては、その家はかなり老朽化しており、生活していた空間以外は物置と化していたため、その整理とそこからの資料の分別等は水野さんたちがやられたそうです。
 現在管理は、水野さんたちが日曜日を、その他の曜日は地域に住むおばあちゃんたちが月2回ボランティアで行っており、市は消耗品程度を負担しているそうです。ただし鍵開けは水野さんたちの仕事で、おじゃました日はちょうど水野さんが鍵開け当番で、一緒に資料館まで歩いて行きました。

 水野さんたちは日曜日に集まるたびに、近所の空き地にほかってあったタイルをもらってこようとか色々展示や整備に工夫をこらしており、先日は草ぼうぼうの裏山の草取りをしたら立派な窯垣がでてきたと喜んでいました。またおばあさんたちも、お茶を出したり、掃除をしたり、生き生きと管理をし、また話し相手になっていました。
 その他、市からは小径整備費として年500万円が予算化されているそうです。なんでも始め500万円という金額を聞いたときは、かなりのことができると喜んだもののいざ使ってみたら、舗装が30m位しかできなかった、と笑っていました。
 もともとこの活動を始めたとき、近所の工場等を回ったら、「金がどれだけほしいんだ」と言われびっくりした。金なんかもらったら責任も持てないし、ちっとも考えていなかった、と同席してくれた本業窯窯元の水野さん?が話してくれましたが、先の整備費の話もそうですが、年500万円程度でちょうどいい、長続きする活動ができる、と言っていました。
 全くボランティアというか、仲間内の楽しい活動に市が最低限の援助をし、おばあちゃんにも生きがいを与えている、ということで、非常に理想的な姿だと感心しました。
 最近はこうした活動に共感し、工場の壁面に製品(ノベルティやカップ等)を飾ったり、新築の住宅も壁に陶器を埋め込んだりしてくれる人も出てきたそうです。
 東京方面からも訪れる方がけっこうみえ、またリピーターが多いと自慢していました。周辺も含めて、観光・商業施設は何もありませんが(自販機がある程度)、のんびり陽の光、土の香りを感じながら、おばあちゃんたちと話をするのも楽しいと思います。よかったら一度訪れてください。
 あ、そうそう、入場料は無料。休館日は水曜日です。


(97/11/ 7)
 久しぶりに窯垣資料館を訪ねてきました。上の報告の後にも、地域のおまつりなどに家族連れで訪問したりしましたが、今回はデジタルカメラを持っての訪問。資料館裏手の崖もすっかり清掃され、見事な窯垣が現れました。ボランティアのおじいさん(前はおばあさんと聞いていたけど、今日はおじいさんばかり3人ほどがいました)。そのうちのお一人が庭へ出てきてくれ、解説をしてくれました。
 窯垣のすばらしさ、家によっては土台にも使っていること。庭に植えられた「なり」というこの付近では珍しい南方系の植物のこと。近所にはもっと素晴らしい民家も残っていること。それから周辺の小径の案内。多くの青年が窯を構える部落。長さ20m11連もあった大きな登り窯「王子窯跡」。窯材で出来た祠。また現王子窯では今も土の精製から始めて鉢などの生活雑貨を作っているそうです。写真は資料館下の民家の蔵ですが、資料館開設後、蔵を整備したもので、周辺にも明らかに整備の効果が及んでいるようです。
 今も25〜6人ほどのボランティアで資料館の管理が続いていることに大きな安堵と嬉しい気持ちを抱いて帰ってきました。

 窯垣の小径資料館や瀬戸市のことをもっとよく知りたい方は、次のホームページをどうぞ。
瀬戸市ホームページ−まちかどミュージアム




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