かわら●高浜桜満開


(2000/ 4/ 8)
 春満開の3月。愛知県は西三河地方の西部、衣浦湾を挟んで半田市に面する人口38千人の街・高浜市へ行って来ました。介護保険制度が導入されたこの4月。高浜市は宅老所を始めとする充実した福祉施策で、全国的にも注目度が高い街の一つです。名鉄知立駅から伸びるのどかな三河線に乗って20分ほどで三河高浜駅に着きます。高浜市は北部の新川・吉浜と南部の高浜が合併してできた街で、その中間地である三河高浜駅周辺は、かつては何もないと言われていたほど寂しい駅前でしたが、今では再開発事業が施行され、駅の立体化に伴い駅西に2棟、東に1棟の高層ビルが建設され、ベデストリアンデッキに街路も大きく整備され、それだけを見れば20万都市にもふさわしい立派な様相を呈しています。しかし残念ながら、1階には空き店舗募集の広告が目立ち、上階の県住宅供給公社の賃貸住宅もかなり苦戦しています。
西側  三高駅前再開発  東側
大山公園/狸の巨像   

 こうした様子を横目に見つつ西進し、大山公園を経て、県営赤松住宅に向かいます。折しも大山公園は桜が満開。狸の大きな像を中心に、家族連れが多く弁当を広げ、ウォーキングトレイル事業「鬼のみち」の整備と合わせて再整備されたかわらをふんだんに使った公園のあちこちには今宵の花見の陣取りのテープが張り巡らされています。公園の北隣にある赤松住宅は、11階建ての高層棟を中心に、4〜6階の中層棟が、中庭を囲み型に配置されたゆったりした感じの住宅です。設計は藤川原設計。中層棟の3棟は南入り階段室型の特徴ある平面型をし、かわら屋根を載せた外観は、小屋根がきれいなアクセントとなって、なかなか美しい景観を有しています。ところでこの赤松住宅は20戸のシルバーハウジング住戸を有し、集会所と併設された生活団らん室には、LSA(ライフサポートアドバイザー)の方が昼間常駐され、高齢者の生活相談や見回りに当たっています。当時、県でシルバーハウジングを担当していた川端さんの話によれば、平成3〜4年の当時は、福祉施設を併設しない、LSAが住宅内に居住しない形でのシルバーハウジングはなかなか建設省の理解が得られなかったとのことですが、「強サービスにしない」「シルバーの普遍化をめざす」愛知方式はこの住宅を突破口に、全国的にも普及したとのことでした。
 この日は休日にも関わらずLSAの方に来ていただき、様々な話を伺うことができました。現在20戸の高齢者の年齢は68才から88才。夫婦が4組で残りは単身者。最近一人入院後死亡され、1戸が空き家になっているとのこと。勤務は平日の9〜11時、14時30分〜16時30分の4時間、平均1日4〜5戸を訪問。まだLSAになって3ヶ月とのことでしたが、幸いこの間緊急ブザーが鳴ったこともなく、誤作動も最近は少ない。20戸の中には食事サービス等を受けている人もいるとのことでしたが、具合の悪いときには近くの八百屋に電話して配達を頼むなど、十分自立した生活を営んでいるようです。残念ながら、集団生活指導などはやられておらず、相互のつきあいはそれほどないとのこと。また自治会ともつきあいがほとんどなく、カギも別々に持って集会所の利用は自治会の管理分野となっているとのことでした。また団地内にあるシルバー菜園も自治会が管理しており、シルバーとは名ばかり。ただしシルバーハウジングのサービスを受けていない高齢者も多いので、実質シルバー菜園として利用されている様子。
 全体的にかなりあっさりとしたサービスがされている印象で、ややがっかりした感もありましたが、基本的な見守りや相談業務は機能していることから、「強サービスにしない」「シルバーの普遍化をめざす」という趣旨は実現していると評価すべきかも知れません。居住者とLSAさんとの関係の中で、それぞれの住宅にふさわしい世話の形態があっていいとも思います。
県営赤松住宅北棟外観
シルバー菜園と南入り中層住棟
県住宅供給公社団地越しの県営住宅

 この住宅も以前の簡二・簡平団地を建て替えたもので、中高層に集約した結果、南側半分は県公社分譲住宅として販売がされていました。大山公園を南側に廻り、公園南端の城郭風の大山公民館を眺めつつ、鬼のみち整備がされた道路を通って駅まで戻ります。
 午後はまず、駅前の再開発ビルの2階にある「高浜市いきいき広場」で、市の長寿課長の岸上さんから話を伺いました。市の総合計画に上げられた「いきいき健康」=いきいき広場、「市街地整形」=三高駅前整備、「やきものの里」=かわら美術館、の3つのビジョンの実現と、それらをつなぐ「鬼のみち」の整備というシナリオは大変きれいに実現されています。高浜市が福祉先進市と言われるようになった背景には、隣接する知多地区への日本福祉大学の移転が大きな背景となっているようです。日本福祉大系列の社会福祉法人「昭徳会」が特別養護老人ホームを開所したのが平成5年。その後、この昭徳会によるショートステイ・デイサービス、ケアハウス開所と続き、平成8年には再開発ビル内に作業療法学科・介護福祉学科を有する日本福祉大学高浜専門校が開校。これと平行して市も平成4年からホームヘルパー養成研修を開始し、住民参加型のふれあいサービスや移送サービスを実施するなど、福祉に力を傾け、またこれに呼応するように、民間の開業医ら6人により設立された医療法人「碧会」が平成10年に老人保健施設を開所。さらに福祉の高浜の名前を高めたのが平成11年に開設された3ヶ所の宅老所。この4月からは使用料200円(送迎料+200円)を徴収するなど、新たな展開を試していますが、いきいき巡回バスの運行と併せて、なかなか高齢者には好評のようです。
巡回バス いきいき号バス停/ポケットパーク
寺院の屋根の飾り瓦

 続いて前土木建築課長の尾崎さんからウォーキングトレイル事業を中心に話を伺いました。全国生産の実に53.7%のシェアを誇る瓦産業、海・川・焼成窯の煙突・土管やレンガの土留めといった特徴ある景観、そして健康意識の高まりを背景に、「おてん婆・おてん娘の会」の女性グループの提案がきっかけとなって、高浜港駅・かわら美術館・大山公園・三河高浜駅を結ぶ「鬼のみち」をウォーキングトレイル事業により整備を始めたのが平成8年。平成11年からは稗田川沿いの豊かな自然の中に市民の暮らしぶりが見える「川のみち」の整備に着手し、さらに今後は吉浜人形を始めとする産業のみちである「海のみち」の整備も計画をしているとのこと。こうしたハード整備と平行して、歩こう会の開催や、住民参加による植樹事業である「緑の回廊事業」などのソフト事業にも着手しており、その代表として「鬼みちの会」から派生してできた「鬼みち案内人の会」から3名の方が来ていただき、この後のガイドを引き受けてくださった。ちなみにこの「鬼みち案内人の会」では秋には5回ほどガイドをしたが春は今日の1回だけ、請われれば案内をするので遠慮せずに声を掛けてほしいとのことでした。

 さて、三河高浜駅から始まる「鬼のみち」には、かわらを随所に使ったポケットパークや案内板、モニュメント、また舗装も瓦材によるインターロッキングなど、様々に整備がされています。また道中には、僧侶などの飾り瓦が数多く並ぶ寺社の屋根や鬼瓦を製造する工場などがあり、楽しい道です。皆さん、鬼瓦にも雄と雌があること知ってました?阿と吽で、口を開いている方が阿=雌、口を閉じている方が吽=雄。立派な鬼瓦は型などを使わず基本的に手作り。西日本を中心にまだまだ全国的に発注があり出荷しているとのことでした。ちなみにこうした鬼瓦を作る職人さんを鬼師と呼ぶそうで、「鬼のみち」沿いに20ヶ所点在している案内モニュメントには、それぞれ20人の鬼師さんによる様々なオブジェが飾られています。
宅老所「じぃ&ばぁ」
宅老所内喫茶カウンター
宅老所内和室

 さて、そうこうするうちに、宅老所「じぃ&ばぁ」に到着。元家具店を利用した建物は商店街にある気を付けなければ見過ごしてしまうような普通のトタン板に囲まれたものでした。屋内に入ると思った以上に明るく、正面に12畳程度の和室と右カウンターに6席ほどの椅子が並び、キッチン設備が整っています。カウンターでは1杯200円のコーヒーが用意され、また抹茶も飲ませてもらえます。月に1度は手作りコロッケの販売もあり、地域の人々にも親しまれているとのことでした。あいにく送迎バスが出たところで、高齢者の方は一人もみえませんでしたが、応対するホームヘルパーの方は3名ほど。使用料を徴収するようにしたため、4月から1名、市の職員がいる他は全員ボランティア。もちろん無償ですが、有償化についてはボランティアの方達の調整が難しいとおっしゃっていました。ここを利用する高齢者は使用料と引き換えに、緊急時の連絡先や氏名などを確認して預かるということで、基本的にあくまで宅老所という施設の性格を保っています。
宅老所「あっぽ」
宅老所内
鬼のみちの整備

 次におじゃました宅老所「あっぽ」も、歩いて5分ほどの「鬼のみち」沿いにあります。こちらは元老人ホームを改修し、老人憩いの家として利用していたものを、浴室を整備して、入浴料込みで200円の使用料を徴収し、預かります。建物の東側半分は、地域の老人会「青木クラブ」として利用され、当日はいずれも男性ばかり、囲碁を打つ高齢者が2組に、椅子で休みつつ歓談する方が2名ほど。老人会会員は使用料無料ということもあり、よく利用されているとのことでした。宅老所として利用されている西側和室では、健康体操を行う女性が3名ほど、体を動かしていましたが、明るい部屋でもあり、集会所として利用されている様子でした。ただし、通りからやや奥まったRCの建物で、正面からはほとんど様子が伺えないことから、地域開放性という点では難があるという印象です。
煙突のある風景
かわら美術館広場と観音像

 煙突が伸びる瓦製造の工場や窯跡などを見つつ、高浜のもう一つの南のシンボル、巨大な観音像を眺めつつ、かわら美術館にたどり着きました。内井昭蔵設計のアースブラウンの建物は土から持ち上がったような景観を有し、北側のガウディ張りの瓦をモザイク状に埋め込んだ広場では、子供達がてんでに遊んでいました。館内の企画展・常設展を見、また正面の巨大な鬼瓦に驚きつつ時間を過ごして、帰りは名鉄高浜港駅に向かいます。
かわら美術館 北広場と正面外観
鬼のみち沿いの民家

 こちらの「鬼のみち」沿いには、市長の生家である醤油醸造工場など、立派に整備された木造建築が並び、北側が小高い丘になっているせいか風もなく、心地よい散歩道となっています。途中には土管を積み重ねた土留めや、丘上の住宅に至る斜路が設けられた擁壁などがあり、眼を楽しませます。
 その後は魚の美味しい寿司屋で親睦をはかって解散しましたが、シルバーハウジング、花見、宅老所、鬼のみちと実に盛り沢山にして楽しい1日でした。




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