北陸の小京都

越前大野






(2000/ 2/17〜18)



 福井から九頭竜湖へ向かう1両だけの可愛いレールバス・JR越美北線に揺られること小一時間。名古屋では10数年ぶりの大雪に見舞われた日の翌日、福井県大野市は雪の中に埋もれていました。今回は2日間にわたってのシンポジウムへの参加。1日目は「まち歩き−大野を見、歩き、味わう」というプログラムです。集合場所に指定された平成大野屋は、昨年6月に市が52%の出資により設立された第3セクターが管理運営する施設です。昭和初期に建設された洋風の繊維会館を復元した建物は、調査に基づく建設当初の色彩が鮮やかで、1階はレストランに物販施設、2階は休憩コーナーとなっています。ファミレス風という声もあがっていましたが、外部は仕方ないとしても内部はもう少し時代を感じさせる雰囲気にしても良かったかもしれない。
 まち歩きはボランティアガイドの方に案内をしていただきました。大野は金森長近によって開かれて以降400年にわたって続いてきた城下町です。城下は城の東に開け、東西に横町・六間・七間・八間・石燈篭・正善町、南北は一番から五番までと寺町の各通りが格子状に並ぶ構成となっています。そのうちの七間通りは石畳で舗装され、カラー電柱、街路灯と景観に配慮した街の整備が進められています。また通りには伝統的景観のお休み処が整備されるとともに、景観条例も制定され、各店舗も景観に配慮した改修が徐々に進められているようです。もちろん古くからの伝統的な商家も数多くあります。石畳の通りに沿っては融雪用の溝が配され、各家並みの間には通りに交差して排水路が整備されているのも特徴的です。
平成大野屋
七間通りの町並み
お休み処「七間本陣」

 私たちはガイドさんに先導され、市内に4カ所あるうちの一つの造り酒屋「花垣」さんを見学させてもらいました。まずは雪吊りの木々が美しい中庭を眺めながらお茶をいただきつつ、くつろぎます。その間ガイドさんから大野の歴史などの話を伺いましたが、なんとこの大野は上水道の整備がほとんどされておらず、各戸毎に井戸を掘っているとのこと。年に1度保健所の検査があるとのことですが、そこで不合格になったらどうするんだろう(ちなみに煮沸して利用してくださいと言われると旅館で聞きました)。最近は降雪の減少、水田の減少などにより水量が減りつつあり、郊外部では深井戸を汲み上げた簡易水道が整備されつつあるとのことですが、さすが大野、水の都と言ったところでしょうか。ちょうどこの時期、この名水を利用した酒の仕込みが行われており、良い香りが工場内に充満していました。ところでやっぱり造り酒屋見学といえば試飲。ああ、うまかった。
 次に案内されたのは、伊藤順和堂という屋号の和菓子屋さん。試食のお菓子とお茶をいただきつつ、ご主人の話を伺う。「商業協同組合 大野ショッピングセンター」の会長として郊外でSCを営みつつ、市街では自然素材を利用した和菓子を提供。七間通りの整備そして都市景観条例(H11.3.25施行)は民間の活動が市を動かしたものと自負されるとともに、自らの修景・保全の活動に誇りを持っておられました。隣接するスーパーは約700万円をかけて前面の改修を行ったとのことで、さらに修景補助制度の創設も働きかけているとのことでした。しかし八間通りと交差する通りには空き家も見られ、また空き地の駐車場化も進んでいるようです。これはある程度仕方がないとは思いますが、平成大野屋といった外向きの情報発信・観光事業とは違う内向きの施策も必要ではないでしょうか。もちろん翌日のシンポジウムで伺った市長の話は大変魅力的・意欲的で、特に城下の大野高校跡地を活用したシティゲート構想は大変面白く伺いましたが。
二番通りの民家と空地          七間通りの町並み  修景したスーパーマーケット
 さて、しばらく西へ向かうと寺町通りに出ます。大野は大変お寺の多い町で、4万強の人口に700もの寺があり、南北通りの見附(アイストップの意)には必ず寺が配されているとのことですが、この寺町には特に多くの寺院が集まっており、通りも石畳で整備され白壁の塀と溝に良く調和しています。雪がますます激しく降りつのる中、某寺の庫裏でのっぺ汁と里芋の煮付けにお漬け物、お茶の振る舞いがあり、身体も心も暖かくなります。ちなみに恥ずかしながらのっぺ汁をお代わりしたのは私です。暖まったところで、雪吊りの樹木と石燈籠が並ぶ燈籠通りを、城を見上げつつ歩を進めます。洋風の診療所があったり、立派なうだつが並ぶ民家があったり、なかなか楽しませる景観です。まち歩き2時間、町の人々の暖かさを感じつつの楽しいひとときでした。
寺町通り         燈籠通り
 解散後、改めて今度は城側に向かって歩きます。武家屋敷旧内山家は既に閉館していましたが、軒のつっかえ棒が特徴的な蔵など、外観だけでも十分楽しめます。ちなみにこうした蔵は、市内のあちこちでも見られます。雪が多い土地柄故とも思いますが、どうしてそれだけ軒を出す必要があるのか、やや理解に苦しむ気もします。そうこうしているうちに、ボランティアガイドさんも含めて女性3名のグループと合流してお話を伺いながら、お清水(おしょうず)へ向かいます。立派な屋根のかかった施設には今も水が湧き続け、洗い物などができるようになっています。残念ながら翌日も含め実際に利用している場面は見ることはできませんでしたが、こうした施設というのはなつかしいものです(川で洗濯をした原体験あり!ちょっと自慢)。ちなみに水を口に含むと生暖かく、冬でも12・3度の温度に保たれているとのことでした。続いて朝倉義景の墓のある義景公園までご一緒しお話を伺いましたが、気がつくと同行の女性は明日のパネラーの「谷中・根津・千駄木」の森まゆみさん。お若い姿に少し驚きましたが、谷中のことなど少し話をさせていただきました。またガイドさんの博識振りにもびっくり。基本的にボランティアということで、若干は市から謝礼等は出ているようでしたが、その親切で暖かい対応には感激です。
武家屋敷旧内山家    軒のつっかえ棒が特徴的な蔵   お清水

 旅館(ふじや)では、岩手県江刺市の(株)黒船というまちづくり会社で尽力されている方や(是非またいつか訪問し見学記を書いてみたい)様々な立場の市役所の方などと交流ができ、また旅館の女将、若奥さんも人当たりの良い方々で話も弾み楽しい思い出となりました。
 翌日はまたシンポジウムの間に少し時間を取って再度、今度は一人でまち歩き。夜の間にさらに積もった雪を融雪溝に落とし込む作業をしている人々の姿を見つつ、お清水を過ぎ、お城の登り口の郷土資料館に向かいましたが、旧裁判所という大きな和風建築も雪の中に埋まっていました。やなぎや薬局、黒野書店など、前日見逃したいくつかの立派な建物を見つつ、大野の人の暖かさを思い起こしていました。この魅力ある町が地域の財産として末長く受け継がれていくことを願いつつ。
やなぎや薬局
黒野書店
町で見かけた商店




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